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たつみと高澤が校内をひと巡りしてくる間、シローとリンは教室に戻って荷物をまとめることになった。たつみの資料集めが済み次第、高澤の引率で喫茶店に向かうのである。考えてみれば、高澤がそんな風に生徒と接するという話もあまり聞いたことがない。
「先生と……喫茶店とか……」
リンは心躍らせるどころか半ば放心していた。耳がじわじわ赤くなったり突然顔を覆ってみたりと、ひとり忙しくしているのが少し笑える。こういうわかりやすい反応を高澤の前でも出せばいいものを、どうやら緊張でそんな余裕もないのが現状らしい。
教室にはリンとシロー以外の姿はない。
さっきまでちらほらいたクラスメイトもみんなもう帰ってしまったか部活に向かったようだった。窓が西側に面していることもあって、先ほどより少し傾いた太陽の光が窓から教室に差しこんでいる。
「本当ラッキーだわ……ありがとシロー。今日はシローが輝いて見える。天使みたいよ」
「……気色悪いこと言うな」
シローが顔をしかめて言い返すとリンはにへへと緩く笑った。
シローは肩をすくめると、机の横にぶら下げているスクールバッグを机上に置いた。だがいくらのんびりと帰りの支度をしてみたところで、校内を歩いてまわってくる方が時間がかかることは明らかだ。
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