1.大盛りとふわふわ

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 装いや雰囲気からすると、彼は大学生のように見えた。 「妙なところで会ったね」  彼は唇の端をにこりと持ち上げる。人のよさそうな顔で笑うなあとシローはしみじみ思った。そうっすね、とシローは半分口の中で答える。  そういえば、自分は店の中でも客と必要以上の会話をしたことがあまりない。おしゃべりな昼のパートのおばちゃんたちみたいに、あらどうもぉ、なんて言えるテンションはなかなか出てこないものだった。  シローがひとまず音楽プレーヤーのスイッチを切ってイヤホンをくるくる巻き付けていると、彼が口を開く。 「えーっと、ニイドメくん、だっけ」 「え? なんで名前……」  こちらは顔を覚えられていただけでも驚きなのに、と思っていると、それが顔にでも出ていたらしく、あーあのね、と彼は苦笑気味に種を明かす。 「名前は名札見て……で、えっと、気を悪くしないでほしいんだけど、君覚えやすいんだよね。お冷やを注ぐとき、いつも小指が立つから。おもしろくってさ」 「は? 小指?」 「そう。こーんな風に」     
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