1.大盛りとふわふわ

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 間抜けな声が出た。その後ろの方で、電車の到着を知らせるベルが鳴る。ホームを歩いていた人々の足がわずかに早まり、あたりがにわかにざわめいたようだった。シローは顔を上げ、尋ね返す。 「高澤謙太郎先生、すか」 「そーそー!」  彼は懐かしい名前だと顔をほころばせる。こんな偶然もあるものだな、とシローは一人関心しながら続けた。 「俺の担任です」  えっ、と彼の顔中に驚きが広がる。ホームに入ってきた電車の風と音が、彼のやわらかい髪をぶわりと舞い上げ、笑って何か言った彼の言葉をかき消してしまった。  すごいね、と、たぶんそんなことを言ったのだ。シローにはそう見えた。  電車はほどなく停車位置に停まり、目の前のドアに向かって列がわずかに動きはじめる。それに倣って、シローたちも踏み出した。そうだ、と彼はシロー側の肩に提げていたトートバックを逆側へと提げ直す。 「まだ言ってなかった。おれ、陣たつみっていうの。よろしくねニイドメくん」  電車のドアが開く。シローは頷くみたいに会釈をし、電車に乗り込んだ。
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