貝殻から聞こえる《高校編》

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 今まで、自分と深谷との仲がこんな風になるなんて考えたこともなかった。  喧嘩ならまだいい。  だが、存在自体を否定されたら、拒否されたら、――どう修復していいのやら、どう歩み寄るべきやら、わからない。  直接問いただしても、誘いを断り続ける理由を尋ねたときみたいにはぐらかされるだけのような気がした。  ……もしかしたら深い理由などなくて、それよりももっと単純に、深谷は俺と一緒にいるのがつまらなくなってしまっただけなのかもしれない。  高校に入って、お互いに新しい友達や仲間もできた。  そっちと遊ぶ方が深谷にとっては楽しくて心やすいのだとしたら……。  考えれば考えるほどわからなくなった。泥沼にはまるとはきっとこんな状態のことを言うのだろう。  誰にも相談などできなかった。  他に友達がいないわけでもないが、「仲がよかった友達が最近冷たいの、どう思う?」なんてガタイのいい男子高校生に相談されたらドン引きだろ? 中学生日記でも観てろと俺なら丸投げする。  原因を探している間にも、季節は変わり、そして深谷の彼女も何人か変わった。  ひっきりなし…というわけではなかったが、いつも誰かしらが途切れることなく彼の隣には居た。  そこは俺の場所だったのに――。  ある日、そんな風に思う自分に気付き、愕然とした。  探しても探しても見つけられなかった原因は、そこにあったのかもしれない。  そもそも俺はなんでこんなにも懸命にしつこいくらい必死になってその原因を探してるんだ? (俺は…まさか…)  すぐさま浮かんだ可能性をバカバカしいと否定した。  否定して、忘れようとして、……友達連中と遊び歩いた。  深夜徘徊して親に殴られたり、街で喧嘩騒ぎを起こしたり、その場のノリに任せて酒と煙草も覚えた。  ただ…、ナンパや合コンで女をお持ち帰りしてセックスに溺れることはなかった。……どうしてもできなかった。  まぁ恥ずかしながら、俺にもそんなやんちゃをしていた時期があったのだ。  でも、一か月ほどでそれにも飽いてしまった。  いや、飽きたというか結局のところ俺は水泳を捨てられなかったし、それに――、  偶然、街中で私服姿の深谷と彼女が腕を組んで歩いているのを目撃してしまったからだ。
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