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「あ、あの! 深見くん! きゃっ……」
階段を降りる彼を呼び止めようとするも、私は走って階段を降りる学生に突き飛ばされ、階段から転び落ちてしまった。
うぅ……擦りむいた。血が……。
「おい、そこの貴様! ぶつかったら謝れ」
「ひっ! す、すみませんでしたぁ! 」
「俺じゃなくてあの女に……まあ、良い」
そんな事より、彼に生徒手帳を渡さないと! 怪我は軽傷だし。
「あの! 」
「鈍くせぇな、お前」
彼は私の元へ。
「へ? 」
「怪我は? 」
「す、擦りむいただけなので! 」
「血出てんじゃねぇか」
彼は溜息をつきながら言う。
「あ、あの! 生徒手帳、渡したくて……さっき落としたから」
私は彼に生徒手帳を渡す。
「俺の生徒手帳を届けに? 」
「は、はい」
「お前、馬鹿か? 普通、俺をびびって先生や生徒会長を介して渡させるぜ? 」
「だ、だってそんな事したら、届くまで時間がかかりますし! それに、その間深見くんが無い事に気付いて不安になったらって思ったら……」
「さっきの俺を見てたんだろ? 」
「見てたけど、私も人の悪口言う人は嫌いですから! 正しいと思いました! 」
ああいう風に自分の意見をはっきり言える人ってなかなかいないから素直にすごいと思ったの。それに、ジャストマイタイプ! 言動が土方様と似ている!
「鈍くせぇ上に変な奴。待ってろ」
「へ? 」
彼は鞄から絆創膏を取り出すと、私の擦りむいた膝に貼る。
「これで良いだろう」
「あ、ありがとうございます……」
優しい部分もあるんだ! はっ! まさにこれって飴と鞭! さっき私を鈍臭いとか馬鹿呼ばわりしてたのに。
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