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私は自分自身に何度か言い続けた。こういう時は、中学校に電話しろと学年集会たる決起集会でもクラス会でも、担任が言っていたことを思い出した。私はお財布からなけなしの小銭を取り出して、雪で埋まりかけの緑色の公衆電話の扉を必死にこじ開けた。
必死にカバンの奥底から生徒手帳を取り出して、中学校に電話しようとボタンを押し始めた。それと同時に頭の中は嫌なアナウンスが流れ出した。決起集会やクラス会で、散々受験でやらかした先輩たちのお間抜けな話を延々と聞かされていたのだ。これから一生私の遅刻電話はこの中学校で語り継がれていくのだろう。でもそんなこと今は言ってられない。
「はい、神鷹中学校です」
「3年1組の永原です。島谷先生いらっしゃいますか?」
私の声はすでに震えていた。島谷先生は私の受験会場の高校にいるから、絶対中学校にいるはずがない。それでも動揺した馬鹿な私は担任の名前を呼んでしまった。
「永原さん?島谷先生は、揚羽高校にいますよ。どうしたんですか?」
この声は、よりによって私がこの中学校で1.2に嫌いな先生が出てきた。なんで、こんな時にあなたなの?情けなくて涙が止まらない。
「永原さん、どうしたんですか?」
「電車に乗り遅れてしまいました。どうしたらいいか、分からなくて」
気が動転しすぎて冷静な判断ができなくなっていた。どちらにせよ、高校へは行かなきゃいけないのに、私はアホな電話をしてしまった。
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