私の黒縁メガネくん

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その後の受験の手応えは全くなかった。私は一緒に受験した友人2人に、あれだけのヘマをしたので私だけ落ちたと散々愚痴った。それと同時に、黒縁メガネくんが如何にイケメンだったかを、あんな男前はなかなか巡り会えないと力説した。もし私が落ちても、彼が受かっていたら、名前だけでも聞いてきてほしいと嘆願した。母にも私の黒縁メガネくんの爽やかさを唱え続けた。しかし友人2人はそんなイケメンは受験会場にいたとしても、そもそもそれどころではなかったと言うし、母は呆れながら、私の男の顔の趣味をあまり信じていなかった。 3月になり、あっという間に合格発表の日になった。力説した黒縁メガネくんの話も2人に飽きられ、落ちた自覚のあった私は、高校での12時の合格発表には行かず、13時に人知れず母に高校まで連れて行ってもらった。 合格発表の掲示板には、ほとんど人がいなかった。私は掲示板に近づいて、私の受験番号を探した。 189番、189番と呪文のように唱えた。186番、187番、189番。私の受験番号は、確かにそこに記されていた。車から降りてきた母に、私は満面の笑みで手を振った。それと同時に黒縁メガネくんは無事に受かっただろうか、そんなことを思っていた。 4月になり、知らぬ間に入学式の日になった。合格発表の掲示板と同じ場所に貼られたクラス割の表を見た。私だけ1年2組。2人とクラスが離れたことを少し寂しく思いながら、私は1人2組の下足箱の前にたどり着いた。 すると突然、爽やかな風が吹いたような気がした。目の前を、あの黒縁メガネくんが通り過ぎていった。そして私の隣で靴を入れ替えた。 勇気を出せ! 「おはようございます」 私は突然彼に話しかけていた。 「おはようございます」 黒縁メガネくんも挨拶を返してくれた。 「同じクラスなんだね。私は神鷹中の永原です。よろしくね」 黒縁メガネくんは下を向いて少しズレたメガネを直した。 「初めまして。僕は白山中の山岸です。こちらこそ、よろしく」 「凪ちゃん?」 母がやってきた。山岸くんは私と母に軽く会釈をして教室へ向かって行った。 「凪ちゃん、もしかして?」 「そう、そう」 「すごく爽やかな好青年だったわ」 「でしょでしょ。あれが私の黒縁メガネくん」
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