2006/6/14

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田中さんが教室を出てすぐ、友人の宮野さんも教室を出て行った。 「まじかよ。田中さんやばすぎ!なあ、やばくない?」 高橋君は、げらげら一人で笑い続けていて、他の男子はそんな高橋君に「笑いすぎだ」と呆れ返り、クラスの派手な女子に集団で罵倒されると、もう何も言わなくなった。 確かに、顔が全然違った。 僕は、写真写りがめちゃくちゃ悪いんだなと思っただけだったけれど、高橋君に悪く言われて、田中さんはやっぱり傷ついたのかもしれない。 放課後、篠田を迎えに4組に向かった。 4組に着き、教室のドアを開けると、中には誰もいなかったけれど、田中さんの机の上には、何かの花柄の筆箱が置きっぱなしだった。 机をよく見ると、引き出しの中も教科書やノートがいっぱい入っていた。あんなことがあったから、きっと慌てて帰ったんだろう。 今日は確かに可哀想だった。 女子だし、気にすんのかな・・・。 散々悩んだあげく、手に持っていた鞄から数学のノートとボールペンを取り出す。ノートの一番最後のページをビリビリちぎると、何を書こうか、と考える。 “大丈夫?” “気にすんな。” 頭の中に浮かんだ言葉は、いざ書こうとしたところで、なんか違うよな、と思ってやめた。 結局、今日の事と全く関係のない言葉を書いた。 書き終わった紙を見ると、急いだからか、恥ずかしいからか、文字がなぐり書きのようになってしまった。 書いた紙をどうしようかと考えていたら、廊下の遠くの方で話し声が聞こえてきた。 僕は慌ててその紙を小さく折り畳むと、田中さんの筆箱に入れた。
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