幻の餃子

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「台湾の黒社会の筋でよ。虎とか、サイとか、オランウータンとか、まあそういう珍しい密猟の肉を扱って、中華料理屋に卸してた訳だわ」 「虎とかサイは漢方に使うとか聞いた事があるけど、オランウータン?」 「猩々(しょうじょう)って言ってな。あれも何か縁起いい動物なんだわ」  暴力団絡みなら知っているんじゃないかと思って聞いてみたが、台湾の黒社会と来たか。  それにしてもオランウータンまで食べるとは、中華民族恐るべしである。 「けどよ、闇市場なんていい加減なもんでな。品薄のブツに偽物を混ぜたのがばれちまった。経営難で夜逃げした事になってるが、怒らせた客が華僑の偉いさんだからよ。多分、今頃はコレモンって、ヤクザ筋の噂だぜ。あっち系は怖いよな、やっぱり」  悪友は指を喉に当て、かき切る仕草をする。 「うわ…… 他の業者とか知らない?」 「止めた方がいいと思うけどな…… 裏筋の特殊肉なんて大概は中華料理の材料で、そっち系の業者ばっかだぜ?」 「そっかあ……」  そっちというのは、台湾とか中国の黒社会絡みの業者という事だろう。  悪友は珍しくも真顔で警告し、僕も今回の話は無理かと諦めかけた。 「とりあえず、そのレシピが書いてあるノートを見せてみ?」 「これか?」  僕はカバンに入れて持って来ていたノートを取り出し、悪友に手渡す。     
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