幻の餃子

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「一応は。でも、そういった物なら、今でも手に入るのではないでしょうか?」  特殊肉とは、日本では食習慣が乏しく、業務用としてわずかに流通する肉の事である。  例えば鳩、ウサギ、ダチョウ等々。  海外では普通に食べられているのだが、手に入れるのは難しい為、専門に扱う流通ルートがある。うちの施設の厨房でも、入居者の要望でその様な肉を扱う事があるのだ。  そういう物で、当時の日本でも比較的ありそうな物だとすると、ウサギ辺りだろうか。  農家が副業でアンゴラウサギを飼っていたというし。あれは毛を取る為の品種だから、寿命で死んだ物が食肉として闇市に流れてもおかしくはない。  今でも出回っている様な物であれば、老人の食卓に供するにも問題ない。 「少々高くても、お金さえ払えば手に入るのですよね?」 「ええ、まあ…… でも、真っ当な業者さんではない物で……」 「え?」  店主は口を濁す。  真っ当ではないとなると、合法的には扱えない物。つまり、天然記念物、絶滅危惧種等の密猟品だろう。  富裕層の好事家が、その様な物を密かに買って食べているというのは、都市伝説の類ではなかった様だ。     
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