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(な、なんで!?なんで!?なんであの人が………王子がここにいるの!?なんで?)
彩はトイレの扉に顔を向けて自問した。
時間を巻き戻してみる。
朝、祖母は新人の剣士が来ると言った。
一度も修行したことがないと言っていた。
(新人の剣士の付き添い?あ、でも、ベテランが弟子を連れているのは見たことあるけど、新人に付き添いがいるとしたら、保護者がついてくるか。てことは、その保護者がベテランか、できる人だよね?でも、そんな人いなそうだし!てことは、王子が新人?
あでも、それはそれとして、まさか会社でわたしがこういうことしてるって、誰かに言わないよね?ま、まあ、それは向こうも同じか。言わないでと頼ん…………っ!?)
「あのー。」
「ふあぃっ!?」
背後から予期せず掛けられた声に、彩は体をビクつかせた。
「あ、ごめん、驚いたよね?」
「ななななななに!?なんなの!?」
彩は王子ーー宮本さんに振り向いた。
彩の反応が面白いのか、口元が緩んでいる。
「あなた、身内に不幸があったって、言ってなかった?」
「あー、うん、あれは嘘なんだけど。」
(嘘ついて休んだのか…。)
(ま、私も早退したから人のこと言えないか。)
「父親に、どうしても言ってほしいと言われて…。」
(ん?父親?)
「あのー、もしかしてお父さんって、孝宏さんっていう名前?」
「そう。あ、知り合いなんだ?」
「あ、まあ、あの、何回か、あったことがあって…。剣の練習とかで…。」
(あの剣の達人の息子が同僚とはね。)
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