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村正を継ぐーそれは、魔物退治を生涯にわたり行うことを意味する。
村正は妖刀とも言われる日本刀であり、室町時代に魔物を斬るために作られた。
真田幸村が徳川家康を倒すために持っていたと言われ、徳川家からは嫌われていた。
経緯は分からないが、宮本家の初代はこの刀を振るい、魔物を退治していた。
人外のものを斬るのだ、並の剣の腕前では魔物に勝てない。そのため、村正を継ぐものは必然的に剣の達人になる。
(まさか、素人に継がせるとはね。おじさんも何を考えてるんだか。)
とはいえ、村正はすぐ目の前にある。
「ねえ、その肩に担いでるのは村正でしょ?ちょっと、触らせてくれない。」
彩は、宮本さんの右肩に負われているロッドケースに注目した。
「駄目だよ。父さんからは、絶対に他人に触らせるなと言われてるんだから。それに、魔術師なら、道具はめったに他人に触らせないのは基本だよね。」
魔術師は自分の道具はよほどのことがない限り、他人にはさわらせないのだ。
それは、道具は自分のパワーが宿っていて自分のパワーが充分に発揮できるようになっているからだ。他人が触れば、それは忽ち、触った人物の所有物になってしまう。
(うっ、意外に基礎知識がある。さて、どうしようかな。)
村正に触れることは、この世界にいる者にとって憧れであり、奇跡に近い。
彩はなんとかして触ろうと思考を巡らせた。
「あの、実は私、あなたのお父様から、村正を振るってもいいっていう許可をもらってるの。」
「…………。」
(さあ、どうする?)
宮本さんはしばらく考えてから、言葉を発した。
「村正を得ようとする者は、あらゆる手を尽くしてくるから気をつけろ。何があっても、ぜっったいに他人には触らせるなと言われてるから、だめっ!」
厳しい口調だった。
「あ?あ、やっぱりダメか…。ま、予想はしてたんだけどね。」
彩は非常に残念そうに言った。
「ごめん、こればっかりは無理。」
「謝らなくていいよ。私が悪いんだし。………ん?」
背後に気配を感じ、彩は振り返った。
「どうしたの?」
「んー、多分、おばあちゃんの使い魔かな。早く戻ってこいって言ってるみたい。」
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