少女像の怪談

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 怒気荒らくドアを開けると、玄関のまん前に、交通量調査の少女像が置かれているではないか。はるか遠い山中に捨てたはずの!  しかもまたもや、計数機器の音が聞こえはじめた。  カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ、カシャ……。 「やめてくれーーっ!」  音は鳴り止まない。  車田は狂乱して叫びまくり、近所の人々がみな目を覚まし、集まってきた。  翌日。車田のりおは警察に出頭、飲酒運転での過失致死について犯行を自供した。 †             †             †  さかのぼること数週前。 「あれっ、カウンターが? 数字は全部ゼロでリセットしたはずなのに、乗用車のところが一台だけ押されてる」  最初に気付いたのは、少女像の身辺を掃除していたボランティアの若者だ。故人とは生前、知り合いでもあった。 「誰か、押さなかったか?」  そう聞いても、みんなが怪訝な顔をする。  そもそも変なのだ。少女像の指はちょうど「乗用車」のところに固定され、人が押せないようになっているのだから。  異常は続いた。  カシャッ。  毎日、朝晩のおなじ時間帯、誰が押したとも知れずひとつずつ数字が増えていく。     
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