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奇妙な現象はボランティアの全員が周知するところとなったが、なぜか気味悪さを感じた者はいなかった。そして彼らは、ある乗用車が少女像の前を通るとかならず計器が音を立て数値が繰り上げられるのを確認する。
その車に乗っているのがひき逃げの犯人なのか? 被害者の思念がとりついた少女像はみんなにそのことを訴えようとするのか?
ボランティアたちは問題の車の後を追い、運転者の所在を突き止めた。
車田のりお。26歳。会社員。
疑わしさMAXながら、しかしそれだけでは決め手に欠ける。
勤めもあり普通に暮らしているようだが、ほんとうにこの男が少女を轢き殺したのだろうか。
どうしようかと思いめぐらすうちに、車田のりおは自分で墓穴を掘った。
深夜、交差点に乗りつけると、少女像を車に積んで運び去るという暴挙に出たのだ。
ひそかに追跡していったボランティアたちは、山中に車田が少女像を捨てるのを確認する。
「あの野郎、ひでぇ真似しやがる」
すぐ取り抑えようと息巻く者もいたが、それではひき逃げした証拠までは得られない。目障りだから撤去してやったんだ、と言い返されるかもしれなかった。
彼らは一計を案じた。
回収した少女像を、車田のりおの家の前に設置し直すことにしたのだ。その前に、みんなでカウンターの音を聞かせ、車田を神経衰弱に追い込んでいく。
効果は絶大だった。
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