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「……それが、記憶に無くて」
「…記憶に無い?」
「田上くんたちから聞いた話だと、私は気を失った田上くんたちを病院の中に運んだあとに何かがあったみたいで、壊れた塀の近くで倒れていたみたいです」
「運んだのは記憶にあるのですか?」
「はい、そこまでは確かに」
「外傷がなかったってことは戦ってはいない……と。確かあの日の日本には、あなたの臣下が魔物たちの回収をしていたんですよね?」
「ああ、一匹残さず魔界に返すように言った。俺はあいつらを信じてるから取り残しはないだろうし、あいつらを呼び出したのは会長も近くにいた病院だ。病院からスタートしているだろうから、病院付近に魔物が潜んでいたってのはまずあり得ないな」
「……そうですか、となるとわかりませんね。一体何者の仕業なのか…」
「ただ」
勇者の言葉に被せるように言って、カップに入ったコーヒーを見下ろしながら続ける。
「魔界でお前らと分かれたあとに俺は病院に戻って、そこで会長の異変に気づいたんだ。最初に気づいたのはシュリンだがな。で、俺は会長たちの話を聞きながら病院の周りを調べてみた」
「何か見つかったのですか?」
「………会長が倒れていた場所のすぐ近く。病院を囲う塀の外側にそれはあった。―――雷と土の、残留した魔力が」
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