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微量だったがそれは確かにあった。探知したんじゃなく、魔力を目視する『王の眼』の力を使って見つけた。
あの力を使わなくては見つけられないほどに微かな欠片を。
「…残留した…魔力…?ちょっと待ってください、それはどういうことですか?魔力がその場に残っているなんてまずあり得ないことですよ?」
「そうだ。魔力の残留なんて特大の魔法を使ったくらいでしか残りはしない。だがあの周辺には破壊のあとも魔法が使われた痕跡もなかった。あれは言うなら―――足跡か」
「あ…足跡?」
「俺の『属性強化』でもあんなあとは残らない。周りになんの影響もなくただ魔力が残っているなんて、俺も信じられなかった。だけど確かにあった」
「…………」
「考えられるとしたら、俺たちの知らない方法を持った人間か魔物がいたということ。それか、どちらでもない何かだ」
「どちらでもないって、どういうこと?」
「………魔王、まさかあなた…!」
「なんの確証もねえよ。でもだからこそってのもある。前例はなく、誰も見たことがないって点を重要視するなら」
額に手を置いて、肘をテーブルに付ける形で言う。
人間でも魔物でもない。最もあり得なくて、絵空事のような漠然とした言葉を。
「―――天使。それくらいしか思い当たらねえ」
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