雷雲連れし雷の子

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馬鹿げた話だ。俺だって口にしておいて何言ってんだと思う。 ……けれど、常識を疑うような事態が起きているのだから、常識の範囲外で考えるしかない。 「て、天使って、あの天使?天国に連れてってくれるとか、人々に幸せを運ぶとか言われてるあの?」 「それで合ってますよ」 「それは……いくらなんでもあり得なくない?だってあんなの空想上の存在じゃない。さすがに天使っていうのは…」 「いいえ天乃さん、天使は空想上の存在なんかではありませんよ」 「え!?」 「魔王、あなたは天使についてどれくらい知っていますか?」 「……人間界だと、さっき会長が言ったような存在だ。けど魔界じゃ逆のイメージが持たれてる」 「…逆とは?」 「そこはどうでもいいさ。はっきり言って俺は天使を見たこともないし、ぶっちゃけいるとは思ってなかった。現実的じゃない答えだとするならってだけで言ったんだが……お前は何か知ってるみたいだな」 勇者はケーキを食べるのに使っていたフォークを皿の上で弄びながら視線を伏せて喋り出す。 「世界を作ったとされる神のような存在、それが天使です。そして天使の他にも、精霊という存在がいるとも聞いています」 「せ…精霊…」 最早会長は話に付いていけていないようだったが、今はとにかく勇者の話に耳を傾ける。
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