雷雲連れし雷の子

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俺もまだ二本しか見たことはない。バズギアが魔界にあったのは、榊の前の持ち主が魔界にやってきた人間を倒した時に奪ったものだと聞いていたし、人間に授けたというなら残る二本も人間界にあるのだろうな。 「ただ、どういう経緯で天使は人間たちに宝剣を授けたのかが気になるな」 「……それはまたの機会にお話しします。今は天乃さんのことを優先しましょう」 「そうだな、じゃあまずは、お前が知ってるだけの天使と精霊の話を詳しく……」 「あのぉ、すみませんお客さま」 突然輪に入ってきた店員に話を遮られた。聞かれたかとも思いちょっと肝を冷やしたが、 「雨が降ってきそうなので、もしそうなったら店内に移動していただいてもよろしいでしょうか?」 「雨?」 さっきまで快晴だったのに?と空を見上げると、確かに分厚い雲が空をびっしり覆っていた。ゴロゴロと雷が鳴る音も聞こえるのでこれは荒れそうな予感がする。 「降ってきたら移動します。またその時声をかけますので」 「わかりました。あと、こちらがご注文のエクレアでございます」 「ん?」 テーブルに置かれたエクレアに首を傾げる。あれ、こんなの注文したっけ。 尋ねるよりも先に店員さんは店の中に戻ってしまっていた。 「誰が注文したんだ?」 「ボクではありませんよ?」 「私も違うよ」
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