雷雲連れし雷の子

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「じゃあ結局、考えは変わらないってことなんだね」 「ああ、そうだ」 「僕たち精霊と戦うことになるけど、いいの?」 「それしかないならやるだけだ」 「一応、天使に作られて世界の監視を任されてる存在なんだけど」 「監視する奴が監視されてる奴より強いとは限らないだろ」 「そっかぁ。残念だよ。それじゃあ仕方ないね、僕は一旦帰ってこのことを報告してくるよ」 「おいおい、ただ食いして話すだけ話して帰るのか?」 「あ、ごちそうさまです!」 「しょうがねえから払っといてやるよ」 「わっ、ありがとう!魔王のお兄ちゃん!」 「いいっていいって気にすんな。その代わりと言っちゃなんだがな?」 「何?」 ヴォルトが首を傾げる。 俺は黒い煙りを全身から漏らし、何事もなかったように立ち上がる。 見下ろす俺の目と見上げるヴォルトの目が見つめ合ったのも一瞬。 「会長をテメェらの勝手な都合で巻き込んだ落とし前、ここでつけさせてくれよ」 少年の童顔に固く握った右拳を叩き込み―――鈍く大きな音を撒き散らして殴り飛ばす。 道路を挟んだ反対側の建物に小さな体が激突。突然の出来事に一般人たちから悲鳴が上がるが気にしない。 まだ動けない勇者に指を向け黒い魔力を放出。着弾した途端に勇者も自由を取り戻した。
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