雷雲連れし雷の子

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「会長を頼む、ついでに精霊ってのがどんなもんか見てろ」 「わかっているのでしょうが言わせてもらいます。ここは人間界ですよ?魔王のあなたが暴れれば事態はややこしくなる。それに、今のあなたは制限のせいで魔力がほとんど使えない状態なんですよ?ここはボクがやるべきと思うのですが」 「その通りだな。けどこれから精霊と構えるならどんなもんか見ておく必要があるだろ。それに、もう我慢出来ねえ」 「…………、そうですか」 勇者も立ち上がる。俺は肩越しから目をやると、勇者は真面目な顔で、 「会長と一般の人たちはボクが守ります。建物などの損傷はあとで直せばいいだけ。……ボクもライバルを傷つけられては腹の虫が治まりませんから」 「ライバル?会長がか?」 「ええ。『ライバルと書いて友と読む』、この国のマンガで有名なセリフでしょう?」 「………ハッ、なんのことかわからんが、とりあえず任せた」 「任されました」 喫茶店から道路に跳び出す。向かいの歩道にはヴォルトが何事もなかったように立っているのが見えた。 「―――やろうぜ、精霊さまよォ」 「―――いいよ、かかっておいでよ、魔王のお兄ちゃん」 ヴォルトの周囲に稲妻が駆ける。 俺もまた同様に、黒い稲妻が走る。 吹っ掛けてきたのは向こうだ。俺たちはただそれに受けて立つだけ。 いよいよ始まる。 世界の枠から外れた、規格外の戦いが。
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