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空が黒くなり、今も雷が時々鳴っている。それが俺の中にある戦闘意欲を駆り立ててくる。
空想上の存在。世界の外から現れた敵。
相手は今までの奴らとは一味も二味も違う。
「シュリンに頼んどいて正解だったな…」
胸元に手を置き、意識を内側へ。
手に魔力を籠め、見えない何かを掴み、捻る。
「【オートオープン】」
カチンッと。
体のどこかでそんな音が鳴った―――直後、全身から膨大な魔力が噴き出した。
非常事態用にとシュリンと話し合って可能にした、俺の意思で『ロック』を外す方法。最大五つまで開けられる『ロック』を全て解放し、今ある最大の力をこの身に宿す。
「………」
ヴォルトは相変わらず笑顔のまま。
「………」
対する俺は、もう笑う気はない。
互いの周辺に色違いの稲妻を纏い睨み合うこと数秒。
引き金は、天に響く厳めしい音色だった。
コンクリートの地面を粉々にし、爆音とともに俺とヴォルトはビルの高さを一瞬にして越え、空中に浮かび上がる。
手加減なんざしない。
全力で、このクソガキをぶっ潰す―――!!!
魔力を放出する勢いによって体を真正面に押し出し、ヴォルトめがけ頭から突っ込んでいく。
「僕、あんまり戦いとか好きじゃないんだー」
一気に距離を詰めての回し蹴りを難なくかわしたヴォルトは、俺の真上を飛び越えながら言った。
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