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実験記録三二八。
我々は究極の生命体を作ることに成功した。
悲願としていた勇者をも越える生命体を生み出し、人間界の覇権を握り、魔物を絶滅するために長い年月をあらゆる力を費やし完成させることが出来た。
……だが、結果からすればそれは失敗だった。
我々は怪物を作り出してしまったのだ。
膨大な力は暴走し、抑制機能も効果はなかった。なまじ知識を持ってしまったせいで我々の裏をかき、ずっとこの時を待っていたのだと我々は今になって気づいた。
遅すぎた。こうなることは予見出来ていたのに防ぐことが出来なかった。我々の想像を遥かに凌ぐスペックを持ってしまったのだ。
過ちを悔やむ。
申し訳ない。
こうなるとは思わなかった。
我々は怪物を作ったに過ぎない。我々が覇権を握るなどもう不可能。きっと握るのは奴だろう。勇者を越えるやも知れない力を持ってしまったばかりに、世界を危機に陥れてしまった。
最早我々ではどうにもならない。
だからどうか、どうか切に願う。
勇者でも、勇者パーティーでも、誰でもいい。
どうか奴を。我々の最高の失敗作を止めてくれ。
世界が壊される前に、どうか。
人間の領域を越えた怪物を、少しでも早く。
〇
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