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その時、怪人デリブは気づいた。
あれだけ周りを埋め尽くしていた悲鳴が、逃げ惑う人々の姿が、一つ残らず消えていることに。
「……なん、だ?何が起きたァ!?こりゃあどういうことだ!!」
デリブがレアティアを睨み付け、吠える。だがレアティアは涼しい顔で華麗にスルーした。
「強い奴と戦いたいという願いを、あなたに最高の形で贈りますよ」
「あ゙あ!!?」
わけがわからないデリブはレアティアの態度に激怒し、駆け出し、あの細い首をねじ切ってやろうとする。
―――だけど、そうする前に。
「人間たちの避難は完了した」
デリブの背後に、離れた場所に、誰かが"突然現れた"。
頭上には黒い渦巻く円があり、それも少しして消失する。
「巻き込まれないように別の町に移した。病院もあるだろうしこれで大丈夫だろ、十分やったし俺もう帰っていいよな」
「ダメに決まっているでしょう。妻の側に寄り添うのが旦那というものですよ?」
「次またそんな虫酸が走ること言ったらお前も一緒にぶっ飛ばすからな」
「それは困ります。とにかくお疲れ様でした―――魔王」
魔王。そう呼ばれた人物をデリブは即座に振り返って見た。
黒髪の少年だ。上は白のカッターシャツで下は黒のズボンを着用し、背には小さな宝石が散りばめられた黒のマントが風に揺れている。
「チッ、労いの言葉なんざいらねぇよボケ」
魔王。名はリオシス・サドゥン・アスモヴェリン。
もう一つは、真代 扇。
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