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「ちょっと昆はん?居らん間に随分な女誑しになったんどすな?」 「すみません」 角屋に戻った昆は女将の言葉に首を傾げて困ったような笑みを浮かべた その様子をこそこそと影から見ている遊女達にも原因はある。 が、その大元の原因は新撰組に毒された昆自身にあった。 本来は女の昆。吉原で花魁をしていただけあって容姿には恵まれている。背も一般的な女からすれば頭一個分から半個分は高いのだ できるだけ、橘蛍という存在が張れないようにと顔を半分隠し作務衣を着て、無表情を貫き口数も減らしてきた。 その為今までも女性からの視線も回避していたのだ。だが今は違う。 新撰組と関わる事で貼り付けられた笑顔と口数が増えた事と、明里の件で見た着流し姿と戸惑っている女を少し強引に連れ出す行動力。 確実に、昆に頬を染める女が増えた事は間違いない 「ほんま大丈夫でっしゃろうか?」 「右腕の感覚はまだ戻ってないんですけどね?でも左腕さえあれば女将の笑顔を守り抜くのは容易いですよ」 袖口に手を突っ込み腕を組んで、首を傾げながらヘラッと笑う昆を見て、女将は額に手を当てため息をついた
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