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「おかあはん、あのぉ……」
声を掛ける隙をうかがってたのか、沈黙になった絶妙なタイミングで一人の遊女が声をかけてくる
「頼まれたお使い、昆はんに着いてきてもろおてもいいでっしゃろうか」
頬と耳を真っ赤にしてそわそわしている
「……よろしおす」
「では、行きましょうか」
渋々了承する女将と、嬉しそうに目を細める遊女の顔を確認すると、昆は真っ直ぐと店の前に出る。こそこそと様子を窺っていた遊女達に笑みを向けると両手で顔を隠す素振りが見受けられた。
「お使いはどちらですか?……えーと」
「小町どす。」
「小町さんですね。すみません、覚えるの苦手で……」
「いいんどす。おかあはんに墨を頼まれましてん」
二、三歩後ろを歩く小町と話すために首だけ振り向いて話す昆だが、どうも慣れない。普段は単独行動か着いていく事が多いため、中々その距離感に馴染めないでいた。
「昆はん、恋仲の子はおらへんの?」
「え?」
お使いも無事に終わり小町に歩幅を合わせてゆっくりと歩いていると、急に小町に袖を引っ張られ足を止めた。
「昆はん美丈夫やのに、全く姉はん等にも興味無さそうやし、どっかに好い人おるん?」
何故か目を潤ませている小町に昆は眉を引くつかせた
「おりませんよ?僕は修行中の身ですから、拾ってくれた女将の為に一生懸命働きたいんです。」
不満そうな小町を尻目に笑みを向け、足を進めようとするが、またしても障害が立ち塞がる
「その嬢ちゃん俺達に譲ってくれよ」
「修行中ならいいだろ?坊主」
浪士が二人。ニヤニヤと小町を見ていた
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