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島原の朝は早い
夜は接待、昼は舞や芸の稽古と毎日を勤しんでいた
そんな中。少年、昆は町へ見廻りと繰り出すのだった。
「今日も町は平和でした」
「そうどすか、ご苦労どすえ。店の中でもいつ何が起こるかわかりまへん、用心していておくれやす」
女将とのいつもの会話を済ませた昆は勝手場へと足を向ける
お膳を舞妓や芸妓の居る部屋の前に持っていく。ただそれだけの、簡単な仕事のはずだった。
「おぉ!こーんー!今日も頑張ってるか?」
この能天気な男、藤堂に目をつけられるまでは
「―――なぁ、面白いだろ?」
藤堂は一生懸命昆を笑わせようと努力する
「僕、男色の気ぃありゃしまへんから」
「俺だってねぇよ!」
ギャーギャーと騒ぐ藤堂を背に部屋から出ていく。どんだけ雑に扱っても機嫌を損ねずに話しかけて来る藤堂が本当は羨ましかったのかもしれない
昆は店の廊下を歩く。物好きな客の部屋へ。止まっている何かが動き出そうとしているのも気付かずに―――
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