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「どうだ?」
「何が?」
「ずいぶんと態度が違うじゃねぇか」
失笑しながら足を崩し腕を組み直す昆を見て、土方は鼻で笑う
「まぁ、可愛いとは思いますよ?自分の魅せ方がわかってなければ、あんな芸当できないと思います。流石、女誑しの土方さんが選んだだけありますね」
「てめぇ……」
「ただ総司君って呼んだり、初対面の腕に絡まって胸を押し付けてくるのは如何なもんですかね?」
土方は何を考えてるのか唸りをあげている
「でも僕の意見って所詮女の僻みにしか聞こえないでしょ?隊の規律が乱れるとかはさ、面倒でも土方さんが見極めるしかないと思うよ?」
「……三月やる」
「……ん?」
ヘラヘラ笑っている昆だが、睨み付けてくる土方の言葉にそのまま静止する
「お前には損な役回りになっちまうが、男所帯で冷静な判断が出来る奴がいるとは思えねぇ。仮女中期間三月でって話にしてあっから、お前に一任したい」
「……僕、長州の出立お給金出てないんですよ?」
急に真顔になり、目を細めた昆に土方はばつの悪そうな表情になる
「角屋にも迷惑かけるし、その間僕お給金出ないんだよ?」
「……わかってる」
腕を組み直した土方は凄く難しそうな顔をして何かを考えている
「……わかりました」
先に折れたのは昆だった
「端っから土方さんのお願いを断るつもりもありませんでしたし、ちょっと意地悪言ってみただけです」
「済まねぇな」
ヘラッと苦笑する昆に土方は軽く笑みを向けた
「……これでまともな飯が食える」
「は?」
立ち上がって部屋を出ようとした昆だが、土方がポロっと洩らした言葉を聞き逃さなかった
「いや、飯の味が強烈でな……塩分も強すぎて洗えるものは洗って食おうとしたら、お花の奴目に涙溜めやがってな……今後の事を考えるとどうしようかと思ってな」
「へー?……僕に女中の仕事の面倒見ろって事なんだ、へー」
青筋を増やしながら、それでもヘラッとした笑顔を崩さない昆に恐怖を覚えた土方は逃げるように背を向けた。
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