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「味噌を溶いてもらえますか?」
「はぁい」
その日の夕食早速昆は花と一緒に勝手場にはいる、が―――
「ふっ沸騰してます!火は止めてください」
「はぁい」
「えっ……味噌入れすぎです、水で薄めますよ」
「はぁい」
「一気に入れすぎです。少しずつ加えながら味見してください」
「はぁい」
なんでこの娘、女中やってるの?―――それが正直な感想だ。困った時にはヘラッと笑う。それが習慣になりそうだ
「続きは僕がやりますので、お花さんは大根を切って頂けますか?」
「えー?花、指切っちゃうから包丁は使えないのぉ」
開いた口が塞がらないとはまさにこの事だろう。ありがたいことに作業中だったため向かい合わせになることはない。それが救いだった。
「昆くぅん。ごめんなさぁい」
「え?」
急な謝罪に顔を向けると涙をボロボロ流しながら昆を見上げる花がいる。正直、さっさと準備をしてほしい
「花が役立たずだから、昆くんの仕事が増えちゃうんだよね?」
「ちょ――――」
「お花ちゃん!今日の夕飯なあに?」
本格的に泣き始めた花に、昆は一声かけようとするが、間の悪いことに二人の平隊士がやって来た
「お花ちゃん?どうしたの?」
「あのねぇっ、花が役立たずだからいけないのぉ」
そんな事、言ってません。とも言えず黙っていると隊士が敵意むき出しで睨んでくる
「お花ちゃんこんなやつ放って置いていいから目、冷やしに行こうか?腫れたら大変だよ」
「うん、行くぅ。ありがとう」
気分をよくしたのか、花は満面の笑みで隊士の前を歩き勝手場を出ていく
取り残された昆は唖然としたまま突っ立っていた
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