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「天神・明里どすぇ」 角屋の一室。藤堂と永倉はその芸妓に見とれていた。 「久しぶりだね、明里」 「山南はん!そのお怪我どないしはりましたん?」 明里は部屋に入るなり直ぐ様山南に寄り添うように座る 「二人って本当に絵になるよなぁ」 「そうだな」 藤堂と永倉は自分で酒を注ぎながら寄り添う二人を見る。そう山南と明里は所謂恋仲というやつだ 「頼んだ件お願い出来ましたか?」 「すぐに来はると思います」 明里の言う通り直ぐにお目当ての人物はやって来る 「これは驚きました」 山南と永倉は言葉を失う。 その作務衣を着た少年は長い前髪を右に流していて後ろで髪を括っている。顔は右側が前髪で隠れているが左目の横に泣きぼくろがあり男とは思えない色気が漂っている…… 「本当に似てるな。名前なんて言うんだ?」 「(こん)と申します。どうぞごゆるりとお寛ぎくだせぇ」 永倉が気軽に話し掛けるが、昆と名乗った少年はすぐに部屋から出ていってしまう。 「愛想のうてすいまへん」 代わりに明里が謝る 「それは気にしていません。出来れば彼が店に来た経緯等わかることで良いので教えてくれませんか?」
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