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朝に目を覚ますとそこは知らない天井だった。
何があったか記憶を辿って昨日の事を鮮明に思い出す。2人が泣き止まないから落ち着くまで公園で過ごそうと思って光君に会って泣きついて。どうやってここまで来たっけ?
そうなるのが当たり前だ。秋は殆ど意識が無かったのだから。
そして久しぶりに弟の面倒を見らずに寝たからか体はすっきりとしていた。
起きたころから微かにくすぐる朝食のにおいを秋は辿った。
「起きた?もう大丈夫か?そろそろご飯炊き上がるから待って あと赤ん坊って何食べんの?」
光がおかしなことを言ったわけでも無い。だが秋の頬には確かに涙が伝った。
光の言っていた同族という奴だからだ。そして光の言っている同族とは愛されていない者の事をさす。
秋にはただ朝ご飯が作られていること、心配されることがうれしかったのだ。
そしてその気持ちが分かる光はただ笑い「大丈夫」と言いながら抱きしめることが最善策だと分かっていた。
「ほら飯が冷える」
ぶっきらぼうに放たれたその言葉。でもそれは思っているが故の言葉で泣き止んでほしくてはなった言葉。
光の最大の優しさでもあった。
その呼びかけに「うん」と返事する声もつくられた料理に「おいしい」と零す声も震えていた。
炊きたての白米に何度も何度も涙が零れ落ち。
光は「味が薄くならないか?」と笑って言った。
その言葉にさえも秋は涙を流し不器用に笑った。
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