最上 雛人

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「おはよ! 咲良!」 俺はそう言って後ろを振り返って淡く微笑んでいる咲良に駆け寄った。 咲良は雛人と違って優しくて好きだ。 もちろん雛人のことも好きだけど・・・。 あ。 ちなみに俺の言う『好き』は『友達』としてのだから。 第一、雛人にも咲良にももう恋人がいる。 まあ・・・二人とも同性の恋人だけれど・・・。 「おはよう。春海。雛人。朝から暑いね」 そう言ってニコリと微笑んだ咲良は清廉な桜を思わせる。 「おはよ。咲良。今日も可愛いね」 そう言ってクスクスと笑うは性格の歪んだ最上 雛人(もがみ ひなと)だ。 そんな雛人にそんなことを言われた咲良は少し頬を赤らめてキョドっている。 「雛人。あんまり咲良を困らせんな。要さんに言うぞ!」 俺は小学生がよく言う『先生に言うぞ!』をなんとなく真似てそう言ってみた。 それに雛人は『はいはい』と言っただけでクスリとも笑ってはくれなかった。 それに俺はちょっとだけムッとさせられた。 「・・・雛人?」 そう雛人を呼んだのは咲良だった。 「うん? 何?」 雛人は咲良を振り返るとうっすらと微笑んでいた。 咲良は雛人の目の前まで行くと少し目を細めてどこか痛むような表情を滲ませた。 「雛人・・・顔色悪いよ? 大丈夫?」 え? 俺は改めて雛人の整いすぎている顔を見つめ見た。 本当だ・・・。 雛人は元から色が白い。 けれど、今は白いと言うよりは蒼白い・・・。 「雛人。大丈夫か?」 俺はそう言って雛人に少し近づいた。 なんで早く気づかないかな・・・。 俺はそう心の内で呟いて下唇を軽く噛みしめた。
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