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「負ぶされ」
俺はそう言って雛人を促した。
それを雛人はクスリと笑った。
「俺、重いよ?」
雛人はそう言って俺の背中に負ぶさって俺の首に両腕を回してきた。
俺はそれに『平気』と答えて立ち上がり、ぎょっとした。
軽い・・・。
「・・・雛人・・・お前・・・身長・・・何センチだっけ?」
俺は一歩を踏み出しつつ、そんなことを訊ねていた。
「ん? えっと・・・177センチ・・・かな? 1年の頃からそんなに伸びてないよ?」
雛人の身長が177センチ・・・。
俺の身長が178センチで体重が64キロ・・・。
「雛人。・・・体重は?」
俺は恐る恐るそんなことを聞いていた。
「体重? あ~・・・秘密。知ったらお前、うるさそうだから」
雛人はそう言ってクスリと笑った。
つまり、標準よりも軽いと言うことだ。
それもだいぶ・・・。
「・・・ちゃんと食べてるか?」
俺はそう訊ねて小さな溜め息を吐き出した。
「食べてるよ?」
そう答えた雛人の声も口調もいつもと変わらなかった。
『食べてるよ?』
それは嘘じゃないだろう。
ただ、俺が食べる量と雛人が食べる量は違う。
雛人は食が細い・・・。
「けど・・・」
雛人はそう呟くように言うと俺の首筋にその整った顔を埋めてきた。
雛人のさらりとした髪が首筋に当たってくすぐったい。
「最近は食欲・・・ない」
そう言った雛人の口調と声には力がなかった。
だからだいぶ弱っていることがわかった。
「・・・何か食いたいモン・・・ある?」
俺は歩きつつそう訊ねてみた。
何か食べたい物があるなら食べさせてやりたいと思ったからだ。
「・・・り」
雛人が何かを呟いた。
けれど、俺はその小さな雛人の声を聞き取ることができなかった。
「え? 何?」
俺はわざわざ立ち止まり、雛人の声に意識を集中させた。
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