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そうして翌日の午後、検察庁に連れて行かれました。もちろん、女が殺害したであろう遺体が発見されたお陰で疑いも随分晴れたものと思いました。ただ現住建造物放火被疑事件ゆえ、一応は送検するとのことでした。でも、やはりというべきか担当の検事は被疑者ではなく、参考人という感じで接してくれました。もちろん、正当防衛であると認めてくれたのでしょう。もっとも説明としては殺人の容疑者である女店主の身柄が確保出来ていない状況で私を起訴するのは難しいとのことでした。要は、女の供述も得たかったのでしょう。また、後で知ったのですが、そのときは激しく焔は燃え上がったものの、単に火花が飛散したのみで実際はボヤ程度であったことや、ビルのオーナーとそこを借りて女に使わせていたパトロンが今後を慮り、殺人のみならず放火事件の現場になるのは痛手だとし、宥恕する向きを顧問弁護士を通じ検察庁に申し入れた事情もあったみたいです。
そういう諸々が作用し、嫌疑なしとの理由で釈放されました。もっとも今後の捜査への協力は約束させられました。そして、検事は老婆心ながらと断ったうえ、もし、女が捕まった後、また、事情を聴かれるが、くれぐれも自身がしたスプレー缶を火に投げた行いで女が死んでも構わない、そう思ったと述べない様にアドバイスしてくれました。これは正当防衛なのだからと。ただ、そのときは意味合いがよくつかめませんでした。
そんなことを思い出しつつ、何とか画廊があったビルに辿り着きました。何分入り組んだ処にあるものですから。でも、事件の影響か借り手がつかずシャッターは閉じられたままでした。ふと気付きました。斜向かいも画廊であることを。ただ驚いたことに私があのとき買おうとした絵が掲げられていました。あの男性の死に顔を描いた。それを見て、たいそう怖気づきました。すぐに立ち去るべきだったかもしれません。でも外にいる私の存在に気付いたみたいです。中から男が現れました。見ると顔に傷跡がありました。そして、云うのです。「お待ちしていました。」と。
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