すべてはあの時から

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「いつも自死するつもりでいました。殺し終えた後に。けど…」 「けど?」 「けど、果たせませんでした。それもこれも自己性愛の結果です。」   男のこの言葉に分別なく納得しました。そうして男は続けました。 「女なのに身体が男であることに苦しみ続けていました。その苦しみのため、自身の陰茎を切断しました。その後、性転換手術を受けたのです。でも、外観は女になったものの、何故か満たされないという想いは払拭仕切れずにいました。」  しみじみとした語り方でした。ただ、こんな具合に語りながらもふとしたことで激情するタイプの御仁だと見て取りました。だから、自らの陰茎を切断するなどできたのだと考えたのです。むしろ、こうして穏やかに話していることが、そうしたことへの予兆だと思えたのです。だとすればこのまま何も話さず黙しているのが賢明であろうと。そして、蔑むものでも、無関心でも、興味を示すものでもないという程でいようと思いました。 「そういった満たされない想いはやがて厭世感へ変わっていきました。私は自らの死顔を想像しました。そうして描いてみました。不思議とたおやかな表情をしたものになりました。」     
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