すべてはあの時から

28/29
前へ
/29ページ
次へ
 すると、実に恐ろしい形相で立っていました。しかも、手にある包丁の刃先はこちらを向いていたのです。 「不思議よね。女として男を愛おしく想う様になると、きっとこの人もこの世に生を賜ったばかりに苦しんでいるんだと。だから死にたいって考えているんだと。そうよ、涅槃よ。あなたを安寧に導かないと。」  私は朦朧としながらもタイミングをはかっていました。私の方へ体を向け相たいした次の瞬間でした。私の腹部めがけ包丁をん突き刺そうとしたのです。私はそれを盾にし、防ぎました。刃は折れ、腕と肩をそこに激しくぶつけたのです。かなりの衝撃でした。何分、二つ折りの例の会議用テーブルでしたから。見ると包丁は床に落ちていました。でも、身の安全が確保されたものでもなかったのです。すかさず、顎に一撃見舞いました。案の定、床に崩れ落ちそのままうつ伏せに倒れました。     
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加