すべてはあの時から

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 それから暫くして警官が駆けつけてきました。そして、そのままそいつを殺人未遂の現行犯で逮捕しました。もちろん私も警察署に行きました。ただ、できれば翌朝に聴取をしてもらえればと願い出ました。幸い、今回の捜査官も昨年、私の現住建造物放火被疑事件を担当してくれた方でした。全くの自己都合で心苦しかったのですが、快く応諾してくれました。もっとも嫌疑不十分で不起訴となった私を、一旦は緊急逮捕した後ろめたさもあったのでしょう。  警察署を後にした私が向かったのはやはりあの雑居ビルでした。そして、そこに佇みツィッターを確認しました。すると「どちらかにご案内差し上げましょうか?」と聴いたことのある声がしました。そうです。あの日、私を画廊に連れって下さったご婦人です。 「やあ!」  そう云ってしまいました。ありえない気さくさです。やはり、一つ重しが取れたからでしょうか。でも、当の彼女は私の顔を覚えていない様です。 「あの日、殺人の舞台になった画廊に案内された者です。」 「ああ!思い出しました。てっきりあなたも!」   一応は心配してくれてるのだと知りました。でも、その始終を話すつもりはありません。何分、安っぽい英雄劇であるばかりか、犯人が死ぬのを認容し、スプレー缶を火にくめたものですから。結果的に審判者ともとれる行いをとってしまったのです。 「これから行きたい所があるもので。」  先手を打ちました。でも方便ではありません。先程ツィッターで確認したら、憧れのかの女優さんがママを務めるスナックは開店しているようでした。そのビルのエレベーターに乗ったときゾクゾクとしました。
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