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すべてはあの時から
何かを感じようとしたのではありません。もちろん何も感じるものでもなかったのです。あの日、日本有数の歓楽街のとある雑居ビルの前にぼんやりと佇んでいました。そうしている折にある女性が「もしよろしければご案内致しましょうか?」と話しかけてきたのです。歳の頃七十ぐらいの方でした。すべてはその女性のこの一言から始まったのです。あの鮮烈な光景は未だ目にやきついたままです。そう激しく焔が燃え上がった。
私はあの日初めて警察署の留置場で夜を過ごしました。幸い担当の警察官が私の申し上げた内容に矛盾が少ないと感じてくれたことや、そこの冷凍庫に複数の遺体が存在したことを消防署員から通報されたお陰でその画廊の店主に疑惑が懐かれる始末となりました。だから一応は検察官に送致されましたが勾留請求は見送られました。
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