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ミナ達はバングラデシュ経由でインドに入って、ここまでの道すがらメイドたちの何人かは故郷へ帰還した。
この周辺はヒンドゥーとイスラムの抗争が長年続いていて、境界警備が厳しいから途中でちょこちょこ戦闘があったが、言うまでもなく無理やり押し通った。本当はデリーへ行くつもりだったのだが頼りにしていた相手に連絡が取れず、首都ムンバイへ来ていた。
ちなみに、今回の旅の最終目的地はヨーロッパである。ドラクレスティご一行の5人の内4人が西洋人なので、どう考えても西洋にいた方が目立たない。木は森の中に隠せと言うわけで、まったりヨーロッパへ向かう道すがら、短期間ずついろんな国に立ち寄っているところだ。
メイドたちの祖国であるラオスにも1か月ほどいたし、カンボジアでも遠目から世界遺産のアンコール・ワットを楽しんだりした。そう言う流れでインドにもしばらく滞在する予定だ。
「うぉー! なにこれすげー!」
「うわー。きれーい!」
チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅の前を通り、みんなで歓声を上げる。ヴェネツィア・ゴシックの荘厳な駅がライトアップされた様は本当に美しい。なるほど、インドに来ると人生観変わるというが、確かに変わりそうだ。
「それにしても、どうしてインド? 私すごく居心地悪いわ」
メリッサの文句も正直よくわかる。インドは「聖賢国」と呼ばれるほど、宗教観念が根深く国民も信仰心が深い。おかげさまで、あちこちで僧侶や宗教関連の物を目にする。
正直、化け物にはキツイ環境だ。だからこそパワースポット的な扱いなのだろうが。
とりあえず、今日の課題。
「ホテル無事に泊まれたらいいなぁ」
あの、ベトナムでの出来事。デイヴィス・ファミリー襲撃事件は未だにミナにとって少し、トラウマになっている。襲撃が避けられないとしても、春や龍のようにに悲しむ人もいる。
皆殺しはもう、できる事ならしたくなかった。
今回は前回の出来事を反省してホテルに予約を入れておいた。問題は、あの大荷物(主に棺)を受け入れてくれるかどうか。
ミナたちの車は、タージマハル・ホテルの前に停まる。
ミナ達が車を降りるとボーイが鍵を預かってくれて、ホテルの中へ通された。煌びやかなエントランスの奥に、綺麗な女性が佇むフロントが見える。
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