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「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」
「あぁ、ヴィンセント・ドラクレスティだ」
「ドラクレスティ様ですね。21階のスィートになります」
「ありがとう」
鍵を預かって荷物を運びこもうとしたら、案の定受付嬢から声がかかった。
「え、あ、ドラクレスティ様。恐れ入りますが、そのような大きな荷物はちょっと……」
フロントのお姉さんが困った顔をして制止する。
このホテルには入った時から思っていたのだが、他のホテルに比べて異様に警戒が強い。
今の所棺とはばれていない様だが、布のかけられた大きな箱を見ると普通は何を想像するだろう。
ミナにはよくわからなかったが、クライドは即答で「そりゃ銃だろ」と言ったので、それを踏まえて考えるとお断りも納得だ。
しかし、こちらは断られては困るのである。中身は空っぽの棺なのでご勘弁願いたい。
「問題ない」
「大丈夫だってー!」
「武器とかじゃないってー!」
押し切る気だ。少し半目になったが、思いついてヴィンセントに耳打ちした。
ミナの提案で妥協することにしたようで、ヴィンセントはおもむろに受付嬢に近づいた。
いきなり美形のナイスミドルイケメンが顔を近づけてきたので、少し顔を赤らめて戸惑う受付嬢。その受付嬢の瞳を鋭く捉えて、ヴィンセントの目が怪しく紅く光る。
「部屋に荷物を運びたい。構わないだろう?」
「……はい」
「そうだ」
「はい……どうぞ、ごゆっくり」
魔眼の効果で大成功。意気揚々と荷物を運んで貰った。
「ていうかさー、ベトナムの時もそうすりゃよかったんじゃねーの?」
「しーっ! クライドさん、今更それは言っちゃだめ!」
案の定睨まれた。
客室の扉を開けると、思わず絶句するほどの空間だった。高価そうな調度品、高級感あふれる建築様式の部屋、海が見渡せるバルコニー。
とても広くてとても豪華。さすが世界でもトップクラスの高級ホテルだ。
「ヒャッホー!」
ベッドに飛び込むボニーとクライド。この二人のはしゃぎっぷりは何回見ても辟易する。二人はひとしきりベッドに感動した後、イチャイチャし始めてしまった。
「ボニー愛してるよ」
「クライド……」
ミナ達は静かに寝室のドアを閉めた。
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