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「せ、せっかくだし、観光でもしません!?」
この微妙な雰囲気を打開すべく提案してみる。
「そうね。ここにいても退屈だし」
「あぁ。そうだな」
意外にも二人とも乗ってきた。
ミナ達はホテルの近くにある観光名所「インド門」を訪れた。門は巨大でこれまた綺麗。インドの建築文化は本当に見ごたえがある。
インド門に見惚れていたら、「ミナ、お前ここで待てるか?」と急に待て、を言いつけられた。
「え? ヴィンセントさんとメリッサさんはどこに行くんですか?」
「あのホテルにずっと滞在するわけにはいかないからな。私とメリッサで家の情報収集をしてくる」
そう言うと二人はミナの返事を待たずにさっさといなくなってしまった。
(異国に一人って心細い……)
かといって待てを言いつけられてるから、ここから動くこともできず、仕方なしにインド門を堪能することにした。
そもそも、長期滞在ではないはずなのに、なぜ家が必要なのだろう。多少の長期滞在数か月程度ならホテル住まいでも良いくらいにはお金はあるし、ホテル住まいの方が色々ホテル側がやってくれて非常に楽だ。
何故ここで家が必要なのかと考えていると、一つの結論に思い当たる。
(あ、化け物時間忘れてた)
時間の感覚が人間とは大幅に違う化け物の事である。ちょっと、と言われて鵜呑みにしてはいけない。100年前を最近だと言い張るキチガイである。
よくよく考えればラオスの1か月も「ほんの少し」と言っていたし、今度は家をゲットするくらいだから、1年くらいはいるのかもしれない。
(でも、インドって見るもの多そうだし、退屈はしなさそうだな)
そう思うと、この旅も楽しく思えた。めまぐるしくいきかう大勢の人も、スラム街も、珍しいものが並ぶ市も、溢れんばかりに箱乗りするバスも、きっと面白いに違いない。
昔、日本が建設した新幹線は、もっと線路を延ばしただろうか。父セイジから聞いた話では、運行初日は新幹線に箱乗りしようという猛者が大勢いたそうだが、今でもそんな勇者はいるのだろうか。
そんな事を考えながらインド門の前で待っていると、メリッサとヴィンセントが帰ってきた。
新しいお家はベトナムのお屋敷よりも小さいが綺麗だそうだ。一応ボニーとクライドの行為に配慮して、というより居合わせたくないので、もう少し観光することにした。
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