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スレシュは額に汗を浮かべ信じられないと言った顔で睨む。
「何を馬鹿なことを! そんなことができるものか!」
「できますよ。ベトナムのデイヴィスファミリー、ご存知ですよね?」
「ま、まさか、奴らを壊滅させたのは……」
「そう、私達です。私がこんな化け物なんだから、信じてくれますよね? 屋敷の制圧には2時間もかかりませんでした。あの時は皆殺しにしましたが、私はあなた達を殺したくありません。命さえあればお金はいくらでも作れるでしょう? こうしている間にも部下はどんどん失われていっていますよ。いずれは、あなたの命も。スレシュさん、応じていただけたら殺したりはしません。どうか応じていただけませんか?」
スレシュは悩みに悩んで、わかった。と小さく呟いた。
「ありがとうございます。賢明なご決断に感謝します」
礼を言った後ヴィンセントに報告。
(ヴィンセントさん、交渉成立です。攻撃を中止してください)
(わかった)
そして、部下を絡め取っていた髪の毛を外して、むせて苦しそうにする部下に言った。
「あなた、今の話聞いていたよね。戦っている他の部下たちを撤退させるように伝令をしてきて。あなた達じゃ無駄死にだよ」
そう言うと部下は一目散に走っていった。それを見届けて、再びスレシュに目をやる。
「あなたの命は保証します。その代り、どうか大人しく、そこに座っていてください」
そう言って窓に目を向けると、逃げ惑う沢山の人の姿が見えた。さっきの伝令はちゃんと役目を果たしたようだ。
それを確認してソファに腰かけて待つ。しばらくするとドアが開き、ヴィンセント達がやってきて、デスクの陰で怯えるスレシュに目をやった。
「あの男がイルファーン・スレシュだな」
「はい」
ヴィンセントはツカツカとスレシュに歩み寄り、怯えて縮こまるスレシュを無理やり引き立てる。
「貴様がイルファーン・スレシュだな。お前の全財産とこの屋敷は私が戴く。あり難く思え。殺しはしない、安心しろ。だが、奪回しようなどとは夢にも思わんことだ。わかったな」
ヴィンセントに凄まれて、スレシュは「わ、わかった」と怯えるように頷いた。
「ボニー、クライド、こいつを地下室かどこかに閉じ込めておけ」
「りょーかーい」
素直に二人はスレシュを連れて行き、まんまとミナ達は新お屋敷をゲットできたのであった。
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