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時計の針が12時を回った頃、またしても急に「スラムに出かけるぞ」と言い出した。
(なんだろう本当に。付き合う方の身にもなってくれ)
と思いつつ、今度はボニーとクライドも強制連行された。
「いってらっしゃい」
またしてもお留守番をゲットしたのはメリッサだった。渋々3人もヴィンセントに着いていく。
スラムに入ると、夕方よりは物乞いの数は少なかった。夜中で明かりもないからみんな寝ているのだろうと考えて、少し安心した。
奥まで入っていくと、ただでさえ暗いのに一層暗くなっていく。
しばらく歩いていくと、突然、数名の男に行く手を塞がれて、後ろにも回り込まれた。
(これは、あれか。追い剥ぎか)
4人でぼーっと突っ立っていると、男たちの後ろからリーダー格と思われる人が歩み寄ってくる。
「大人しく金を渡して命が助かるのと、抵抗して死んだ上に金もとられるのはどっちがいい?」
歩み寄ってきたリーダーと思われる人物を見て驚いた。
15歳くらいの年齢で、伽羅色の肌に、長い黒髪をポニーテールにした少女――少年強盗団のリーダー、それがシャンティだった。
驚いているミナを尻目に、ヴィンセントは無表情で「金も命もやる気はない」と言いながら指をゴキンと鳴らす。
(アカンアカン! この人に戦わせたら死人が出る! リアルに!)
このスラムを見てしまうと、いくら強盗と言えど情状酌量の余地はある。しかもスラムの中に死体を転がせるわけにはいかない。
「ヴィンセントさん落ち着いて! この人達ただの追いはぎですよ!」
「では、お前がやれ」
「へ?」
突然の命令にキョトンとアホ面を晒したところで、強盗達が襲いかかってきた。
咄嗟にナイフの軌道を逸らせて、腕を引き、鳩尾に肘を食い込ませる。
「その調子だ。さっさと片付けろ。クライド、お前は後ろの奴らをやれ。殺すなよ」
「え? あぁ。わかった」
返事をしたクライドは後ろに回り、ヴィンセントは壁に寄りかかって傍観し始めた。ボニーはヴィンセントの足元で体育座りをして、格闘観戦を楽しむ腹積もりのようだ。
「全くもう!」
渋々強盗に立ち向かう。
「オネーチャンなかなかやるようだけど。この人数に勝てるかな?」
「楽勝よ!」
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