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強盗はナイフ片手に襲い掛かってくる。
(みんなナイフか。銃も買えない貧乏チンピラ)
ただでさえ不遇なのに、ミナ達化け物にケンカを売るなんて不幸極まりない。
突き付けられたナイフを避けて、肩を叩いて脱臼させる。顎を殴って失神させ、足を払い転倒したところに腹部に蹴りを入れる。
戦闘は5分程度であっけなく終了した。
「さて、残っているのはあなただけだよ」
どうする? と視線を投げかけると、シャンティは悔しそうに汗を垂らす。その場から逃げないところを見ると、仲間を見捨てる気はないようだ。
「ミナ、お前は修行が足りないな。この程度の奴らに時間をかけ過ぎだ」
いつの間にかヴィンセントが背後で腕組みをして見下ろしていた。
(自分は見てただけのくせに)
心の中でそう毒づいていたのがバレたらしく、拳骨をされた。
シャンティはじりじりと後ずさりをする。それでも逃げないのは本当に大したものだ。シャンティの様子を無表情で眺めていたヴィンセントが口を開く。
「お前に聞きたいことがある」
シャンティは少し驚きつつも警戒を崩さない。
「な、なんだよ」
「お前と、ここに転がっている仲間は全員孤児か?」
「それがなんだってんだよ」
馬鹿にされたと思ったのかシャンティの顔には怒りが現れてくる。ヴィンセントはそんなシャンティの様子を眺めながらも気に留める様子はない。
「そうか。お前たちはどこかの組織に所属しているのか? それとも、ただ単につるんでいるだけか?」
「誰にも飼われる気はねぇよ」
眉を顰めながらも、シャンティは素直に答える。ヴィンセントは相変わらず無表情だったが、少し満足したように言った。
「そうか。ならばちょうどよかった。お前たちは今日から私の家で私に仕えろ」
「は?」
「え?」
何を言い出すんだ、とシャンティを含めヴィンセント以外全員が同じリアクションをした。
「何言ってんだテメェ? 誰にも飼われる気はないっつったろ?」
言った。それを言った直後に仕えろと言うのはおかしい。
「お前の意見は聞いていない。さっさと仲間を起こして私についてこい」
そう言うと放心状態のミナ達を置き去りにして、サクサク歩いて行ってしまった。
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