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「おい!」
「ちょ! ヴィンセントさん!」
シャンティと二人で顔を見合わせて、はぁ、と小さく溜息を吐き、傍に転がっている男達を助け起こす。
「ごめんねぇ。あの人、言い出したら聞かないから。とりあえず手当もしたいし、一緒に来てくれない?」
シャンティはブツブツ言いながら、仲間の一人を抱えて立ち上がった。
ミナとクライド達で2、3人ずつ伸びてしまった人たちを抱えながら歩く。この際手ぶらで帰って行ったヴィンセントが憎い。
「アンタら、その馬鹿力なんなの? 妙に強いし、何者だ?」
両脇に男を抱えながら歩くミナの隣で、シャンティは不思議そうにジロジロ見渡す。
「え? な、なんだろう? 修行の成果かな? ハハハ」
適当に笑ってごまかした。しばらく歩くと屋敷が見えてきた。一息吐いて門を開けようとすると、シャンティが激しく狼狽えだす。
「お、お前ら、スレシュファミリーか?」
「違うよ?」
「じゃぁなんでここに……」
「譲ってもらったの」
「は? じゃぁファミリーの連中は?」
「追い出しちゃったから、もう私達しかいないよ」
シャンティはただでさえ大きな瞳を、更に目一杯開いた。
「はぁ!? どういうことだよ!」
「まぁまぁ、詳しい話は中でね」
興奮するシャンティを宥めて、家の門をくぐった。
エントランスを抜けて広間に入り、未だ気を失っている人たちをソファに横たえる。シャンティと気が付いた少年は、「おぉー」と言いながら室内を見渡している。
「遅い」
ヴィンセントが文句を言いながら階段を下りて来た。遅いと言うなら手伝えと思ったが、ヴィンセントは広間に下りてくるとソファに腰を下ろす。
「ミナ、そいつらの手当てをしてやれ」
「はい」
殆どの人にはたいして外傷はない。擦り傷をこしらえた人達に消毒をして絆創膏を貼っていく。問題はミナが脱臼させてしまった少年。
「うぅ……イテテ」
「ご、ごめん。どうやったら治るのかな……」
「どきな」
急にシャンティが間に入ってくる。シャンティはその少年の腕を持って、無理やり押し込んだ。
「ギャァァ! 痛ェ! もっと優しくできねぇのかよ!」
「治っただけ良かったろ」
シャンティはそのままソファに腰かけてしまった。
「あ、ありがとう」
「別に」
肩が治った少年には氷嚢を持たせて肩を冷やしてもらった。
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