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気絶していた他の少年も全員気が付いて起きてきた。
「うお! なんだここ? あ、お前ら!」
「すっげぇ屋敷……」
ざわつく少年たち。その様子だけを見ていたら、ただの少年そのものだ。
「黙れ」
ヴィンセントが低い声でそう言うと、水を打ったように静かになった。しん、と静まったのを確かめヴィンセントが口を開いた。
「先ほど寝ていた奴もいたから、もう一度言う。お前達は今から私の屋敷で私達に使用人として仕えろ」
その言葉を聞いた少年達はまたざわざわしだす。
「仕事内容は通常の使用人と同じだ。衣食住の保証はしてやるからしっかり働け。仕事の割り振りはミナに任せる」
「えぇ? わ、わかりました」
急に仕事を振られて戸惑いながらも承諾すると、ヴィンセントはそのまま本を読みだした。
さすがにズッコケかけた。
「え? 説明それだけ!?」
「なんだ。他にまだ何かあるのか?」
「山盛りですよ! なんでわざわざ彼女たちを連れて来たのか、とか聞きたいことは山ほど」
「そうだよ! お前何考えてんだ!」
いつのまにか、そうだそうだの大合唱になってしまい、ヴィンセントは大きく溜息を吐いて本を放り投げた。
「全く、仕方がない。質問を許す」
許可がなければ質問を許されない。ヴィンセントは質問をされることが嫌いで、たまにミナも無視されるのだ。
ヴィンセントがかなり自己中なことはシャンティも察したらしく、溜息を吐いた。
「じゃぁ、聞くけどさ。なんでアタシ達を連れて来たんだよ。お前らを襲った強盗だぞ」
「使用人になりそうな手頃な奴を探していたら、お前らが現れたからだ」
スラム散歩の目的は従業員募集だったらしい。
「でも、あたし達強盗だぞ?」
「ふん。貴様らごときの実力じゃ、束になってもミナ一人にも敵わん」
そう言ったヴィンセントがミナを指さすと、その瞬間、「え? こんなチビ女に!?」と視線が集まる。
「一つ言っておくが、冗談でも私達に逆らおうと思うな。どうしても逆らうなら、死ぬ覚悟をしてからにしろ。逆らっていいのはこいつだけだ」
再びミナは指さされて視線が集中する。
変な紹介の仕方をするのはやめてほしい。
「基本的にお前らの面倒はこいつがみる。あとはこいつらに聞け」
ヴィンセントは、それだけ言ってまた本を読みだしてしまった。
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