4 インド編

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 気絶していた他の少年も全員気が付いて起きてきた。 「うお! なんだここ? あ、お前ら!」 「すっげぇ屋敷……」  ざわつく少年たち。その様子だけを見ていたら、ただの少年そのものだ。 「黙れ」  ヴィンセントが低い声でそう言うと、水を打ったように静かになった。しん、と静まったのを確かめヴィンセントが口を開いた。 「先ほど寝ていた奴もいたから、もう一度言う。お前達は今から私の屋敷で私達に使用人として仕えろ」  その言葉を聞いた少年達はまたざわざわしだす。 「仕事内容は通常の使用人と同じだ。衣食住の保証はしてやるからしっかり働け。仕事の割り振りはミナに任せる」 「えぇ? わ、わかりました」  急に仕事を振られて戸惑いながらも承諾すると、ヴィンセントはそのまま本を読みだした。  さすがにズッコケかけた。 「え? 説明それだけ!?」 「なんだ。他にまだ何かあるのか?」 「山盛りですよ! なんでわざわざ彼女たちを連れて来たのか、とか聞きたいことは山ほど」 「そうだよ! お前何考えてんだ!」  いつのまにか、そうだそうだの大合唱になってしまい、ヴィンセントは大きく溜息を吐いて本を放り投げた。 「全く、仕方がない。質問を許す」  許可がなければ質問を許されない。ヴィンセントは質問をされることが嫌いで、たまにミナも無視されるのだ。  ヴィンセントがかなり自己中なことはシャンティも察したらしく、溜息を吐いた。 「じゃぁ、聞くけどさ。なんでアタシ達を連れて来たんだよ。お前らを襲った強盗だぞ」 「使用人になりそうな手頃な奴を探していたら、お前らが現れたからだ」  スラム散歩の目的は従業員募集だったらしい。 「でも、あたし達強盗だぞ?」 「ふん。貴様らごときの実力じゃ、束になってもミナ一人にも敵わん」  そう言ったヴィンセントがミナを指さすと、その瞬間、「え? こんなチビ女に!?」と視線が集まる。 「一つ言っておくが、冗談でも私達に逆らおうと思うな。どうしても逆らうなら、死ぬ覚悟をしてからにしろ。逆らっていいのはこいつだけだ」  再びミナは指さされて視線が集中する。  変な紹介の仕方をするのはやめてほしい。 「基本的にお前らの面倒はこいつがみる。あとはこいつらに聞け」  ヴィンセントは、それだけ言ってまた本を読みだしてしまった。
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