二軒の食堂

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二軒の食堂

 家の近所に食道が二軒ある。味も店の規模も似たり寄ったりだが、片方はそこそこ繁盛しているのに、片方はほとんど人が入らない。  その理由を、はやっていない方の店に行ったことのある奴はみんな知っている。  だってあそこの店、『出る』んだよ。  さすがに姿は見かけない。でも、飯食ってると必ず背後から『それおいしい?』って聞かれるんだ。  怖いし食事に集中できないしで、必然、客足は遠のき、今じゃ空いてりゃいいやという客や、何も知らない一見さんが立ち寄るくらいだ。  もちろん客側にも良心はあるから、店主に謎の声のことを訴えようとはした。でも、その途端何故か具合が悪くなるもんだから、結局誰も真相を伝えられないままだ。  はやってないなりに店は営業を続けているけれど、あの状態でいったいいつまでもつことやら。  幽霊も、何がしたくて総ての客に味の確認とかするんだろうな。何か恨みでもあるならともかく、違う理由なら営業妨害すぎるから出てくるなよ。  今日も、となり合うとまではいかないが、そこそこ近くに店を構える二軒の食堂は、もう駐車場の様子からしてくっきり明暗を分けている。  幽霊被害に遭った俺は、ガラガラの店の方には近づかないけれど、味としては嫌いじゃないからなぁ。なんとかあの鬱陶しい幽霊がいなくなるよう、陰ながら祈っているよ。 二軒の食堂…完
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