第1章

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    その夜、 コンコンと事務所のドアを叩く音で我に帰った。  見るとあの時の娘がガラスの向こうに立っているではないか。  時計を見ると夜の十時を回っていたが、 まだ制服のままだ。  あれから家に帰っていないのだろうか。  事務所の中に部外者を入れるわけにはいかないので、 自分の方から続きのゲストルームに出た。  「えっと、 君はあの時の…」  何を言ってる、 これだけの上玉を誰が忘れるものか、 と思いながら、 しかしあえて記憶があやふやそうに切り出す自分がおかしかった。  「うん。 」  少し間を置いてから、
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