第1章

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 夏の朝は早い。  5時を待つ前に辺りは徐々に明るくなり、 娘はこそこそっとまるで逃げるようにゲストルームを出て行った。  私は気づかないふりをしていたが、 一言の挨拶も礼もなかったことに気分を悪くするより、 彼女の身の上にかかる何か暗くて重い雲のようなものが気になっていた。    私がこのスタンドの仕事に入るのは週に2~3回ほどで、 警備会社の方が無理のないようにシフトを組んでいる。  二週間ほどして、 上番前に着替えていると、 最近この時間になるとえらくかわいい女子学生が道路の向こうの歩道からこのスタンドを眺めている、 というような所員の話が聞こえてきた。
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