憧憬坂～薄紅の頃～

夢

夢を見た。

まだ、私が幼い頃の。

学校から帰ってくる兄（ｱﾆ）さんを、よく、家の近くの坂の下で、お気に入りの、お人形さんを持って待っていた。

しばらくして、兄さんの姿を見つけて走り出すと、兄さんは決まって、私を抱き上げてくれた。

それから家までの帰り道。

兄さんの大きな手が、私の小さな手を、ぎゅっと握ってくれる。

ずっと、この手は離れないものだと思っていた。

ずっと……

ずっと…………

この先も、ずっと。