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新しい部屋が決まる少し前、おれは家賃を払うための仕事を探す。大学を出ているが、おれはバカ。だから知的労働には従事しない。というより眼中にない。引越し関連の労働者として契約採用されたとき、正直助かったとホットする。直に身体を動かすこと、フォークリフトを操ること、トラックを運転することに適正があると発見する。頑丈な身体を与えてくれた両親に感謝。実家の方を向き、手を合わせる。
おれはスポーツを何でもこなす。けれども団体競技は苦手。頭が悪いせいだろう。あるいは独り善がりで他人の気持ちを斟酌しない性格のせいかもしれない。個人競技はどれも得意。特に走りと泳ぎで秀出るか。どちらも道具が要らないスポーツだからかもしれない。オリンピックレベルならシューズや水着も立派な道具だが、おれの実力では関係ない。国体の地区予選優勝止まり。
引越し会社の担当主任から週四日来て欲しいと嘆願され、おれの休日が週一となる。初就職後、数年間勤めた工場を辞めなかったから当然か。理由は打算。時に優しく、時に厳しく、おれを育ててくれた工場従業員に対する礼儀や感謝からではない。あくまで生活を安定させるため。結果、くぬぎと一緒にいられる日が週一となる。おれたち二人にとって悲しい選択。が、おれとくぬぎの生活を将来的に担保するには、そうせざるを得ない選択だ。
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